NEOISM

思想・流儀・価値観を綴るブログ

南米放浪記~10.17、平和と事件 in レティシア~

 

~メキシコシティで出逢ったペルー人を尋ねてペルーの首都近郊に滞在後、アマゾンにある陸路では行けない世界最大の街イキトスの郊外でシャーマン修行に勤しんだ私は、再び街へと戻りしばらく過ごしたあと、アマゾン川を下りはじめた~

 

ペルーのイキトスから船に乗ってアマゾン川を下り、コ口ンビア最南端の街レティシアに着いた翌日、10月17日のこと。

 

目覚めたのは8時過ぎ。今日は快晴。水色のプールが輝いている。シャワーを浴びた。

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この日は、イミグレーションオフィスに行くというミッションがあった。このままでは不法入国になってしまうからだ。

宿の他の連中も昨日ここに来たとのことで、一緒に行くことになった。

 

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髭のイギリス人男性Faheem、溌剌としたベルギー人女性Pia、陽気なコ口ンビア人男性Juanの3人に加え、昨晩ビールを2瓶くれたファンキーでちょっと頭のイッてそうなコ口ンビア人男性Fernandoも行くはずだったが、過飲酒と睡眠不足のせいで結局来なかった。彼らは皆30~35歳くらいだった。

 

Fernandoは7年間も旅しているらしく、少し前にブラジルで全てを奪われたらしく、パスポート再発行などのためにボゴタに行ってからスペインに行くとのことだった。

 

彼らは皆ブラジルのマナウスからハンモック船で1週間かけて昨晩この街にやってくる中で知り合ったそうだが、彼だけは無賃乗船だったらしい。

 

麻薬密輸で日本に収監された友達に会いに日本に少しだけ行ったことがあるとかコスタリカでBMWに乗った彼のおじさんが最近強盗に殺されたとか言っていた。

ベルギー人のPia以外は皆今晩の深夜便でボゴタに向かうことになっていた。

 

 

露店でエンパナーダなどを食べたあと、船乗り場から船に乗った。

まずイミグレーションに行って手続きをして不法入国状態を解消してから、モンキーアイランドに向かうことになった。

 

路上で買い食いして、港で交渉して、ボートに乗り込む。

途中でペルー領土内に入り、ドライバーがガソリンを購入後、2時間ほどかけて島へ。

 

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変わらない景色がひたすら続く。

川に浮かぶ草木と全身に受ける風のお陰で、進んでいることはなんとか分かった。

 

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La isla de los micos。

この島には小さな猿がたくさんいて、私たちにたくさん群がってきた。

バナナを持つと、一斉に襲いかかってくる。

体中が汚れたが、愉快な時間を過ごすことができた。

 

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その島では他にも何かできると思っていたが、小猿たちと交流したあと、手などを洗ってから、その島をあとにすることになった。

良い体験だったが、ただそれだけだったので拍子抜けだった。

何時間も待って数分で終わるなんて遊園地のジェットコースターのようだ。

 

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レティシア方面に戻る中で、Piaが船頭に座り、瞑想のポーズをした。

続いてFaheemもヨガのポーズを。皆が写真を撮る。

私もやってみた。そのとき、背後に虹がかかっていることに誰かが気付いた。

その美しい光景を、皆で共有し、味わった。

 

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ボートは、ペルー側のアマゾン川沿岸の小さな村に到着した。

Puerto Alegriaというその村に入ると、おばさんたちが動物を連れてきた。

大きなインコ、小さなワニ、ナマケモノ、小猿、ヒョウのような小さい猫などを、触れたり写真を撮ったりした。

 

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そのあと、子供たちとボールを蹴ったりして遊んだ。土産物も売っていた。

 

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ボート内が「今日は良い日だった」と明るい雰囲気で包まれる中、私は不完全燃焼感が強かった。

一つ目の理由は、La isla de los micosで、小猿と触れ合っただけで帰ることになってしまったこと。スタッフは特に何も言っていなかったとはいえ、何か見落としていたかもしれない。もっと探険すればよかった。

 

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二つ目は、Puerto Alegriaの一部しか見ずに帰ることになってしまったこと。動物と土産物に触れただけに終わってしまった。狭い村とはいえ、もっと歩いて雰囲気を感じたかった。地図アプリで見れば、大きめの池がある。それを見ておくべきだったと悔いた。

 

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もっと明るい雰囲気でいればよかったが、この日はあまりそれができなかった。

そうすればもっと会話に参加できて、もっと楽しく過ごすことができたのに。

実は朝から体調が悪かった。夜になって頭痛が現れ、その後1ヶ月ほど体調を崩すことになる。シャーマンの修行のせいだったのだろうか。原因は分からなかった。

 

 

街に戻ってすぐ、4人でサンタンデール広場に向かって歩いた。

宿のオーナーのLuisaから、夕方17時20分頃になるとその広場に大勢の鳥が大挙して集まってくるという話を聞いていたからだ。

そのときは17時40分頃だったが、薄暗くなった空を見上げると数多の小鳥たちが鳴き声をあげながら凄い勢いで同じ方向に向かって飛んでいくのが見えた。

公園は案の定糞だらけで、木々は小鳥たちの大合唱の居城となっている。

 

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私は残金1600ペソ(50円くらい)という状況であったため、早くATMでお金を下ろしたいという気持ちが先行して、あまり心を落ち着けることができなかった。

露店でエンパナーダなどを食べてから、宿に帰りがてらATMを探して3軒目、しっかり引き出してから先に行ってもらった彼らに宿の前で追いついた。

 

 

すぐさまシャワーを浴びる。両隣のシャワールームに一向に人が入ってこないので、皆何してるんだろうと思いながら、猿で汚れた衣類もろとも身体を洗った。

 

サッパリして部屋に戻ると、3人が深刻な顔をして何やら話している。

どうしたの?と尋ねると、Piaがリュックに入れていた現金150ユーロがなくなったという。

 

私はあまり驚かなかった。

すぐさま、Fernandoの仕業で間違いないと悟った。

なぜなら私は、出逢ったときから彼を不審な要注意人物と考えていたからだ。

 

彼はどこにいる?と聞くと、もうここにはいないと言う。

Piaを除く3人の男性陣は、宿から夜に皆で空港に行くという話をしていたはずだ。

 

笑顔の絶えなかった楽しい1日が、一瞬にして曇り始めた。

私とFaheemの所持品は無事だった。

Juanはどうだったかというと、昨晩6時前後に、宿で現金を紛失していたということをいきなり告白しはじめた。

 

なぜそれを誰にも言わなかったのかと皆が尋ねる。

彼曰く、盗られたことは確実だと分かっていたが、誰がやったか分からないから何も言えなかったって...それはよく分からないぞJuan。

まあ、盗まれたことにショックを受けて、報告することにまで頭が回らなかった可能性は想像できるが。

 

オーナーのLuisaに伝えると驚いた様子を見せて、本当にちゃんと隈なく探した?とPiaに尋ねた。

正しい反応だろう。犯人探しを始める前に、そもそも犯罪が行われたのかをハッキリさせておくことが重要だ。

 

私はやってないわよ、というLuisa。

皆それは分かっている。発覚直後から皆Fernando以外をクロやグレーと見なしていない。

それに、Luisaはそのようなことをするタイプの人間には到底思えなかった。

 

「本当になくなった」「Juanも盗られている」という話が出て、じゃあなぜそれをすぐに言わないの、とLuisaはまたしても当然の反応。

 

それからJuanとLuisaはスペイン語で、FaheemとPiaは英語で、立ったままあれこれ話していた。

その間に座っていた私は、傾ける耳を双方に移しながら、展開を見守った。

 

私がFernandoと出逢った昨夜から彼のことを要注意人物と見なしていたのは、いくつかの理由があった。

 

・少々イッたような目、ラリったようなテンションなどから醸し出される犯罪臭が強かった。

・彼は今30歳で、23歳のときから7年間も世界を旅してきたのだと語っていた。雰囲気も相まって、7年間もフラフラしているのかこの人は、という感想を抱いた。(長期放浪者にはたまにヤバい奴がいる)

・彼は日本に行ったことがあると言った。しかし8日間だけの滞在だったという。麻薬密輸で拘束された友達に会いに行ったとのことだったが、どこに行ったかは覚えていないと言っていた。また、コロンビア人が日本に入国するのはビザの関係で相当の手間がかかる。なのにわざわざ行って、しかも8日間だけの滞在、そもそも場所すら覚えていないなんて不自然すぎる。

・ブラジルのマナウスからハンモック船でレティシアに来るにあたって、彼だけは無賃乗船だったという話を昨晩にPiaから聞いていた。それは窃盗に等しい。そんなことをするスピリットを持つ人物は要注意でしかないと感じた。

・コスタリカに行かなければならないと言っていた。BMWに乗った叔父がピストル強盗に遭って殺されたからだという。それまでに感じていた胡散臭さを踏まえ、なんか嘘くさいと感じた。

・ブラジルで夜に街を歩いていたときに銃を突きつけられてパスポートも現金も全て奪われたと言っていた。だからこれからボゴタの大使館でパスポートを再発行すると。その話が本当で、もし今資金がないのなら、盗みを働く可能性は高まる。

・皆で出掛けようぜと何度か誘ってきたにも関わらずドタキャンしたこと。留守の間に盗みを働く可能性もあるなと感じていた。

 

だから私は寝ている間も出かけている間もメインのバックパックには南京錠をかけておいた。

 

一方で3人は、ハンモック船での1週間を彼と過ごしている。

4ヶ月ほどかけて南米を廻っていたJuanはコロンビア人同士という同胞感、他の2人は言葉はあまり通じないけれど楽しく過ごした記憶から、彼のことを狂った奴だと感じながらも、警戒心を抱いていなかったようだ。

低予算バックパッカーにとって150ユーロはデカいし、1週間も一緒に過ごして打ち解けていたつもりの人間に裏切られたことへのショックが大きいようだった。

 

昨晩も、11本のビールを飲み、始終スピーカーで音楽を流し、オーナーのLuisaは何度も注意したが聞く耳を持たなかったのだという。確かに深夜でも音楽が少しうるさかったのだ。

 

「振り返れば彼は色々怪しかった」と皆口々に言い出す。

これは皆にとってのレッスンだった、とPiaを慰めながらFaheemは言う。

 

前日、JuanとFernandoは代理店に航空券を買いに行ったのだという。

そして今日の同じ深夜便を取った。

普通、盗みを働くつもりなら、盗んだあとは二度と姿を現わそうとしないだろう。

なのになぜ同じ便を取ったのか。

その時点では盗むことは考えていなかったのか?

あまり利口でなく先のことが読めない人間であるとしか思えない。

 

一緒に空港に行くと言ったくせに午前中にチェックアウトしていったという怪しさしかない行為を見るにつけても、空港に現れない可能性の方が高いのではないかと思った。

 

 

4人で検察局に向かった。

被害者の2人以外は行く必要がなかったが、どんな展開が見られるのか気になり、行くことにした。

 

夜遅くであったため担当者がいなかったが、わざわざ来てもらうことになった。

待っている間、そこにいたJuanや警官らと雑談するか、蚊に刺されないように歩き回るかしていた。

目線を見るだけで明らかにPiaに惚れているFaheemは、2人並んで座ってずっと話し込んでいた。

 

担当者が到着し、建物に入る。

Juanが状況を説明し、私たちは椅子に座って待機した。

彼の航空券がキャンセルされた形跡はないこと、Luisaの持つ宿泊者データから入手したFernandoの国民証明ナンバーから得られた情報によると、彼は窃盗系の罪で服役していたことがあるということなどが明らかになった。

 

今朝まで楽しく会話していた人間がまさか裏切るなんて普通は思わない。

明るく楽しく振舞っていたのに、裏では相手をただの搾取する対象として捉えていただなんて、つくづく薄ら寒い。

皆ショックを受けていた。私以外は皆1週間ほどの付き合いなのだから、ダメージはデカい。さぞ悔しかったろう。

 

彼は世界中に友達がいると誇らしげに語っていた。

そんな彼の心に、それらの"友達"はどう映っているのだろうか。

彼は今までどんな人生を歩んできて、これからどんな人生を歩んでゆくのだろうか。

最後の最後までに、自分の愚かさを悟る瞬間は訪れるのだろうか。

 

20-30分ほど経ってから、真摯に担当してくれた警察官に礼を言い、彼が案内してくれた近くのレストランに入った。Juanが皆に英語で説明する。

 

Fernandoは空港に現れるのだろうか。

すっかり疲れていた私は、早く宿に戻りたい一心だった。雑談にもあまり参加しなかった。

少し話しても、勝手に失速して、その繰り返しに終始した。

 

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23時頃だったか、レストランを出て、別れを告げ合った。

大きなバックパックを背負う2人は北へ、軽装の2人は南へと、それぞれ歩みを進めた。

 

旅にこのような別れはよくあることだね、とPiaは言った。

今日のことをいつか笑える日が来るよと彼女に伝えた。

 

翌日、私は使命感を抱いてブラジルへと徒歩で渡る。

 

2018.10